書評:うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ(著:平康慶浩)
給料のことで、会社にあーだこーだ文句言う前に”行動”しましょうって本です。結局自分を変えられるのは自分だけってことですね。
経営者側の観点からなぜ給料が上げられないのかの説明。そして会社を大きく「ブラック型企業」「業績悪化型企業」もしくはその両方である「二重苦企業」に分け、さらに業種・職種別にどういう行動を取るべきかを説いています。現場で目の前の事に追われていると会社全体の仕組みというものは見えなくなりがちです。全体が見えなければ対策を打つことはできません。
ここで紹介されている業種は製造業、建設業、運輸業、小売・飲食業、医療・福祉関連業、業種は事務職、営業職、専門職となります。この年収クラスはほぼカバーしていると言えるでしょう。
基本的には今いる部署・役職の中でどう立ち回るべきかについて説明されていますが、前述の「二重苦企業」については必ずしもその限りではありません。転職せざるを得ない場合もあります。その際の転職活動の進め方についても解説されています。
また正社員だけでなく派遣・アルバイトについても、正社員になるための企業の選び方・見極め方などについて触れられています。
業界全体を把握し、自分の会社の特性をつかむ。社内で給料を上げる方法は定期昇給・昇進・配置転換の3パターンのみ。そしてその実現は上司の評価によって初めて可能となる。であれば同じ通常業務を行うにしても必ず評価に繋がる”見せ方”をしなければならない。”見せ方”なんて言うと厭らしく聞こえるけれど事実そうなのだから仕方がない。実際に目に見えなくてもそれが伝わるようにしなければならない。上司とて部下の仕事ぶりが見えなければ評価などできないし、知らないことには評価しようがない。「お金のために仕事をしているのではない」といって無給で働く人などいないだろうし、どうせ働くのなら給料が多いに越したことはない。なら実行しないとねって話。
釣りバカ日誌のハマちゃんのように昇進など興味が無い人には無縁のように思えるけど、会社にとって必要が無いのならリストラの対象になってしまうだろう。「成長する気の無い人」など評価したくはない。既に終身雇用など無いのだから。
※でもハマちゃんの場合は社長とコネ(?)があるから別か。
なんにせよ、本書に書かれていることはそう難しいことではないのでやって損は無いはず。本書冒頭でも「『優秀な人』でなくても『できる人』なら給料を増やすことができる」と書かれています。
逆に経営者側から読んでも面白いかもしれません。なんとなく曖昧に部下を評価していた理由がはっきりします。部下から昇給の要望があった際、逆に「なぜ今まで昇給されなかったのか?」の理由にもなります。それは決して経営者側の都合だけで済む話ではないことが分かるでしょう。雇う側も雇われる側も立場が違えば本当に「相手の気持ち」になることなどできないのが普通です。ある意味本書が架け橋になるかもしれません。
これから就職する人にもお勧めかもしれませんね。普段消費者として物やサービスを利用していれば、ある程度その会社のイメージがあるかもしれません。しかし根本的な会社の”仕組み”というものは大企業も零細企業も変わりはありありません。会社の中で”給料”というものがどのような位置づけなのか知る良い機会になります。本書の中で転職活動についても書かれているので参考になるでしょう。下手なセミナーにお金を払うよりはるかにマシです。
サラリーマンの皆が皆、昇給や昇進など”欲”を持って働いているわけでもないと思います。ただそれなら給料について文句を言うのはおかしいでしょう。木の下で口を開けて、ただリンゴが落ちて来るのを待っているのと同じです。じゃあせめて木に登るなり、実が沢山なっている木を探しに行くなりしなければなりません。今の状況に甘んじるのであれば文句を言わずにやる。いずれにせよ文句だけならば無意味であり、非生産的です。変えたいと思うなら対策をとる。本書はその行動の指針となるでしょう。
うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ[Kindle版] | ||||
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