書評:数学女子 智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。(著:深沢真太郎)

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これは素直に良書。売上分析・予測、プレゼンの魅せ方、数字を使った説得力のある会話など物語を通して一通り学ぶことができます。

同じ著者の他の作品(同テーマ)に比べても、本書のAmazonレビュー数は飛びぬけている。やはり「数学女子」ってフレーズが刺さっているのでしょう。数学や統計学というビジネスに必須でありながら一般的にはとっつきにくい分野を如何に分かりやすく書くか?そもそも内容以前に手にとってもらわなければ意味が無いわけですから、タイトルも工夫されていると思います。

簡単なあらすじは以下の通り。

コンサルティング会社に勤める数学女子「柴崎智香」が、中堅アパレル企業社長にヘッドハンティングされるところから物語は始まる。今のところ自社ブランドは好調であるが、「感覚」で仕事をする社員が多く、社長はこの好調がいつまで続くか危惧していた。そこであるビジネススクールで知り合いとなった「智香」のことを思い出し、彼女に数字に強い社員を育ててもらおうと考えた。畑違いのアパレル会社に来た「智香」は部長をはじめ社員たちがあまりに「数字」に対して弱いことに愕然とする。特に会社から成長が期待されている若手営業リーダー「木村斗真」はこれまで「勘」と「経験」だけで皆を引っ張ってきたのだが、彼とは全く話がかみ合わない。「智香」は「木村」に数学的思考とは何かを教えていくのだが・・・

経営をしていれば、売上、経費、昨年対比などなど様々な数字が出てくるわけですが、「データから何が分かるのか?」「どのように推察できるか?」「そこからどのような施策を打つべきか?」を論理的に導き出すのは意外とできていないのではないでしょうか? 「昨年対比+○○% → 好調」と感覚で終わらせてしまうのではなく、「その昨年対比は果たして”意味”があるのか?」「他に要因があったのではないか?」など考察すべき点はたくさんあります。これまで会社で慣習的に見てきた”数字”にまず疑問を持ち、データの意味やその活用を見直すきっかけになると思います。

また上司を納得させるプレゼンテーション、特にデータやグラフの魅せ方も必要なデータと不必要なデータに分け、相手に理解しやすい資料にしなければなりません。それも数学的思考によって可能となります。

物語に出てくる「木村」は前述の通り”感覚”で仕事をしていて、コミュニケーションにもそれは表れています。プレゼンテーションと同様、それだけでは相手に理解してもらうことはできません。「智香」が「木村」に対し「会話には必ず数字を入れるルール」を課したのは如何にも物語っぽいですが、やはり具体的な”数字”を入れることで格段に分かりやすくなるものです。

ビジネスに活かせるトピックも豊富ですが、単に物語としても十分楽しめます。やはり主人公の「智香」のキャラが良く立っていると思います。それと対比する「木村」のキャラもまた「智香」の魅力を引き立てています。

僕自身、理系出身なのでときに人から「理屈っぽい」と思われることもありますが、「智香」に比べればまだまだです。もっと見習わなければと思いました。(もちろんユーモアは必要)

初めは「智香」に反発していた「木村」もだんだんと数学的思考の重要さを理解していき、リーダーとしての自覚が芽生え成長していく様子もいいですね。

この手の「難しい”数字”や”データ分析”の話を分かりやすく解説する」本は多くありますが、データ分析に留まらずコミュニケーションやプレゼンテーションにも活かせる数学的思考が学べるところと、物語としても楽しめるところが本書の良いところかと思います。

社員教育の一環として読ませてみるのも良いかもしれませんね。楽しみながら学べるので、数字嫌いの方にも是非おすすめしたい本です♪

[milliard]
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